営業部門のDXとは?まずは、デジタル化からはじめよう
業界業種を問わず、DXの波が訪れています。
DXはビジネスモデルや経営戦略、営業の変革を促しますが、そこに至るまでには「デジタル化(DX)」が不可欠です。営業部門でもDX対応の前に、まずは「デジタイゼーション」「デジタライゼーション」といった下準備を進める必要があるでしょう。
ここでは、DX・デジタイゼーション・デジタライゼーションという用語の意味や違い、DXの下地としてのデジタイゼーション・デジタライゼーションの方法を紹介します。
記事の内容
1.営業で今話題の「デジタルトランスフォーメーション(DX)」とは?
まず、3つの用語の定義や意味の違いについて解説します。
デジタルトランスフォーメーション(DX)とは?
経済産業省によれば、DXは以下のように定義されています。
“企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。”※1
この定義を見てもわかるように、「DX=デジタル化・IT化」ではありません。デジタル技術をベースにしつつ、新しいビジネスモデルに移行して競争力を高めることがDXの要諦なのです。つまり、DXとは「ビジネスモデルと経営戦略の変革」と言うことができます。
DXの前提「デジタイゼーション」「デジタライゼーション」
DXは大規模な変革を含むものですから、一朝一夕に実現できるものではありません。まずはDXを浸透させるための前提が必要です。その前提とは「デジタイゼーション」「デジタライゼーション」と呼ばれるものです。
デジタイゼーションとは、狭義のデジタル化であり、タスクレベルのデジタル化・IT化を指す言葉です。いわゆる「アナログな業務の置き換え」がデジタイゼーションだと考えて良いでしょう。
これに対してデジタライゼーションは、広義のデジタル化です。端的に言えば「ビジネスプロセス全体のデジタル化」「製品やサービスのデジタル化による付加価値向上」といった施策がデジタライゼーションに該当します。
3つの用語の具体的な違い
3つの用語の意味の違いは、「アナログカメラからフォトストックサービスへの移行ステップ」で説明できそうです。
まず、デジタイゼーションでは「アナログカメラからデジタルカメラへの移行」が行われます。用途や生み出される付加価値はそのままに、アナログをデジタルに置き換えていることが特徴です。
一方、デジタライゼーションは「アナログカメラからオンラインでのデータ送受信機能を持つデジタルカメラへの移行」に例えられるでしょう。デジタル化と同時に新たな機能(オンライン送受信)が付与され、「写真をリアルタイムで他者に転送する」という全く別の付加価値が生まれています。
さらにDXは「アナログカメラからフォトストックサービスへの移行」に例えられるでしょう。フォトストックサービスとは、オンライン上にデジタルデータ化した写真を蓄積し、他者に販売できるサービスです。デジタル化を行いつつ、全く別のビジネスモデルに変化していることがわかります。
※1 出典:経済産業省『DX レポート~IT システム「2025 年の崖」の克服と DX の本格的な展開~』(平成30年9月7日)
1.pdfhttp://www.meti.go.jp/press/2018/09/20180907010/20180907010.htm
2.営業部門におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)の進め方
かつては属人的な業務が多かった営業部門にも、標準化や効率化の波が到来しています。また、全社的にえDXを推進する中で、「攻め」を担う営業部門がDXに対応しないわけにはいきません。こう言った文脈の中で、営業部門はどのようにDXを進めていくべきなのでしょうか。
DXは「下地作り」が必須
DX対応は大企業が多数の優秀な人材をかき集めたとしても、すぐには実現できない難題です。すでにDXを成功させているケースもありますが、そこに至るまでには数年単位の時間を要しています。実際にDXを成功させた(もしくは成功しつつある)企業のプロセスを俯瞰すると、DXの前に「徹底したデジタル化」があることが見えてきます。つまりデジタイゼーションです。
まず「デジタイゼーション」でタスクレベルのデジタル化を根付かせ、「デジタライゼーション」で業務プロセス全体をデジタル化し、同時に人の育成も進める、というステップを経ることでDXへのハードルを低くしているのです。
したがって、まずはデジタイゼーションを目指し、徐々にデジタライゼーションへと移行するというプロセスを経ることが成功の秘訣かもしれません。
営業部門のデジタイゼーション
では、営業部門のデジタイゼーションとして、どういった事柄が挙げられるのかを整理していきます。営業部門におけるデジタイゼーションのポイントは次のとおりです。
・各種ドキュメントの電子化
営業日報、提案書、見積書、経費申請など紙ベースのドキュメントをデジタルデータに移行します。紙ベースのドキュメントは、作成に手間がかかるだけでなく、伝達に必ず「手渡し」というプロセスを経るという弱点があります。そのため、ドキュメントの電子化は人の移動時間を削減して業務効率をあげる効果があるのです。
・会議などのオンライン化
会議、打ち合わせ、商談など営業部門にはフェイストゥフェイスを前提とした業務がいくつも存在します。こうした業務を遂行するためには、決まった時間に決まった場所へと移動する必要があるほか、場所も確保しなくてはなりません。一方、オンライン化が進めばこうした手間は無くなり、ちょっとした空き時間を利用して手軽に意思疎通を図れるようになります。
・デジタル端末の配布
タブレットやスマートフォンなどを各営業担当者へ配布することで、情報共有のリアルタイム性が向上します。資料閲覧や簡単なミーティング、CRMやSFAへの情報入力などさまざまな用途に活用できるでしょう。
・各種ITツールの導入と活用のためのトレーニング
デジタイゼーションでは、営業プロセスの可視化と案件管理を担う「SFA」、顧客情報を一元化する「CRM」、マーケティングの自動化を推進する「MA」、申請決済業務を自動化する「ワークフローツール」といった、各種ITツールの導入も重要です。また、こうしたツールを使いこなすためのトレーニングにもリソースを割くようにしましょう。
営業部門のデジタライゼーション
デジタイゼーションが一巡した後は、デジタルを用いた業務プロセスの改善に着手していきます。具体的な施策としては以下のようなものが挙げられるでしょう。
・一元化されたデータベースを用いて案件進捗や顧客情報の共有を行う
・ドキュメント作成時の元データをCRM、SFA、ERPなどを用いて参照する(データ連携)
・申請、決済などにかかるワークフローをITツールで行い、リモートで完結させる
・Webから得られるデータ(アクセス履歴や問合せなど)をMAに投入し、スコアリングを行ったうえでホットリードを育成する
・リードのデータをSFAやCRMに連携し、インサイドセールスの材料とする
営業部門のデジタライゼーションは、「共有」「連携」「自動化」がキーワードになりそうです。また、オンラインシフトに対応するためインサイドセールスにも注力するケースもあるでしょう。ただし、場合によっては業務プロセスを大きく変えるため、相応の時間が必要になると予想されます。そのため、まずはデジタイゼーションを徹底していきましょう。デジタイゼーションが完了することで、一部の業務は自動的にデジタライゼーションが進むからです。
3.営業部門のデジタイゼーションは「CRM」「SFA」が中心
営業部門のデジタイゼーションでは、「CRM」と「SFA」が成功の鍵を握っています。この2つのツールは、データ連携や情報共有を前提とした機能が豊富であり、デジタイゼーション⇒デジタライゼーションのプロセスを後押しする効果があるからです。そのため、まずはCRMとSFAを中心にデジタイゼーションを進めていきましょう。ちなみに近年は、いずれも「クラウド型」が主流です。
CRM
まずCRMが持つ主な機能を紹介します。
・顧客管理機能
顧客の基本情報と購入履歴などを一括で管理する機能です。居住地や業種など、属性によるグルーピング機能なども併せ持っています。
・問合せ管理機能
顧客からの問い合わせと対応内容を管理する機能です。問合せ履歴が時系列で可視化されるようになり、文脈を踏まえた対応が可能になります。
・顧客分析機能
顧客の購入履歴や問い合わせ履歴などから嗜好などを分析する機能です。SFAやMAとの連携でアップセル、クロスセルに活用できるケースもあります。
・キャンペーン管理機能
各種キャンペーン情報の管理や反響の数値化、アクセス解析など効果測定を主軸にした機能です。
・CRMのメリット
CRMには、顧客との関係性を良好に保ちながら、継続的な契約と新たなニーズの発掘をサポートするというメリットがあります。BtoBでは営業担当者が、属人的な知識とノウハウで営業を進めることがあります。こうした知識とノウハウを営業部門全体の情報資産に転化できることが、CRMの強みと言えるでしょう。
SFA
SFAの主な機能は次のとおりです。
・案件管理機能
商談の日付・訪問先の情報・担当者の情報・商材・商談内容・進捗状況と確度など、案件にまつわる詳細情報を一元的に管理する機能です。時系列やスレッド形式で可視化されることもあります。
・情報共有機能
チーム営業において担当企業の情報や顧客側担当者の異動情報、リアルタイムな行動の把握などに役立つ機能です。フィードやタイムラインのように複数人が閲覧、シェアしやすい形式で可視化されることが多いでしょう。
・集計、分析、レポーティング機能
四半期ごとの売上実績や予実管理などに役立つ機能です。担当者や案件ごとに実績を集計し、分析やレポーティングに落とし込むことができます。また、頻繁に作成するレポートについてはひな形を使用し、作成の手間を削減することも可能です。
・顧客管理機能
CRMが持つ顧客管理機能を似ていますが、SFAの場合は商談の情報や営業担当者の情報も加味されることが多いです。
・SFAのメリット
SFAは営業担当者の行動や知識をデータとして吸い上げ、部門内で共有することを得意とします。また、属人化しがちな営業プロセスをモデル化し、部門全体の生産性向上に役立てられるという強みもあります。
CRM、SFAの導入が困難な場合は?
CRMやSFAは導入までに相応のコストや時間が必要です。また、使いこなすまでにも一定のトレーニングを受けなくてはなりません。予算や時間の都合で導入が困難な場合は、「クラウド型オールインワンツール」も検討してみましょう。クラウド側オールインワンツールは、CRMやSFAの中から、特に使用頻度の高い機能を集約したツールです。小規模な営業部門であれば、クラウド型オールインワンツールのみでデジタイゼーションを完了させることも不可能ではありません。
4.営業DXが必要な理由とメリット
営業にDXが必要な理由は、企業で発生しているロスから判断できます。この項では、営業DXしていないことで考えられるロスやデメリット、営業DXで得られるメリットもあわせて解説します。
営業DXしないことで起こっているロス
営業DXをしていない企業では、業務効率の低下が考えられます。たとえば、訪問先への移動時間が必要な業務では、商談時間前後の移動も含めて時間を調整しなければなりません。場合によっては、相手先が不在であれば、移動時間も含めて商談にかけた時間がムダになるでしょう。
オンライン会議を使ったコミュニケーションは、営業DXにあたります。営業DXは、移動時間や準備時間を削減できることから、お互いにスケジュールを組みやすくなるでしょう。営業DXをしないと、商談の機会損失が起こりうります。
営業DXは、担当者の事務作業やデータ入力業務などの軽減が可能です。営業DXは、営業部門に転職を検討している人への訴求ポイントとなるでしょう。企業が営業DXを導入している点は、優秀な人材に対して訴求効果があります。その理由は、優秀な応募検討者ほど、DX導入による効率性を重視するからです。
たとえば、営業DXではモバイル端末からオンライン経由の報告が業務効率を高めます。そのため、応募検討者はDXを導入している企業に対して効率性を重視している企業と判断します。業務が非効率な企業と思われては、優秀な人材を雇用する機会損失となるでしょう。
営業DXしないデメリット
営業DXしないデメリットは、データの共有ができないことです。データの共有ができなければ、スキルの格差が広がります。
属人的な体制のままでは、顧客や商談などのデータをそれぞれの担当者だけが持ち共有できていない状況が考えられます。担当者の能力が基準になる点が営業DXしないデメリットにあたるでしょう。
もし、その担当者が急な病気や事故などで業務をできなくなったとしたら、データが共有されていないため、代わりの担当者では対応しきれないかもしれません。
また、担当者が異動や退職した場合も同じことが考えられます。属人的な体制のままでは、担当者ごとにスキルの格差が広がるでしょう。
さらに営業DXしていない企業は、担当者の離職や転職を機にノウハウを失う可能性があります。経験や勘に頼っていれば、成果を出せる担当者の離職は痛手になるでしょう。属人的な体制は、結果的に生産性を下げることが考えられます。
DXを取り入れた場合は、共有するデータを基準とします。そのため、営業DXを導入している企業は、担当者が替わっても業務クオリティを下げずに商談を進められるでしょう。
営業DXの必要性がある理由
営業DXは、時代背景からも必要性を判断できます。少子高齢化による労働人口の減少が進む中、企業は担当者ひとりの業務量を減らして、少人数で品質を維持する方向性が求められます。
営業部門においても、効率性を見直さなければ、業務効率化を進めている競合他社との差が開くかもしれません。結果的に、営業DXを取り入れていない企業が営業DXを早くから取り入れている企業との競争に勝てなくなるでしょう。
営業DXにより得られるメリット
企業による営業DXの導入は、営業活動の生産性向上につながります。営業DXから得られるメリットは、次のとおりです。
・営業DXにより業務効率化できる
・DXがBCPへの対策になる
・DXがレガシーシステムを見直し最適化につながる
営業DXにより業務効率化できる
営業DXは、業務効率化を実現します。営業DXは、データの共有がポイントです。営業DXは、個々の担当者が管理する顧客情報をデータ化します。データ化した情報を部門間で共有して、スキルの標準化を目指すことが可能です。スキルの標準化は、担当者が代わっても同じ品質を再現できます。
また、営業DXの導入は、業務の正確性を向上できます。営業DXは、定型業務を自動化できるため、ヒューマンエラーの削減に役立つでしょう。ヒューマンエラーの削減は、作業時間の短縮と人件費の削減にもつながります。結果的に、営業DXは属人的な体制からの脱却を目指せます。
BCPへの対策ができる
DXは、BCPへの対策が可能です。危機管理としての取り組みとなるBCP(事業継続計画)は、テロや災害、システム障害などを想定しています。地震や台風などによるシステム障害は、外部要因として防ぎようがありません。ただし、DXにより過去のトラブル経験を生かして、リスク管理を徹底しておくことは重要な取り組みです。コロナ禍のリモート対応の実現から事業を継続する手段としてDXの必要性が増しています。
営業DXの導入は、データ管理を中心にリアルタイムで情報共有を可能にします。営業DXの特性がBCPの事業継続の目的と共通する部分です。営業DXへの取り組みは、同時にBCPの対策になるでしょう。
レガシーシステムを見直しして最適化できる
営業DXは、企業が古くから使っているレガシーシステムを見直せます。業務効率を向上できない要因がレガシーシステムにある場合は、営業DX導入で刷新することも必要です。
レガーシステムとは、導入してから相当な期間が経っていて、現在のシステムへの互換性が低くなっているシステムのこと。2018年に経済産業省がDX推進に向けた「2025年の崖」の最大の焦点は、国内企業におけるレガシーシステムの放置です。※1
レガシーシステムを放置する要因は、複雑化やブラックボックス化などが考えられます。複雑で手が付けられない状態のまま老朽化していくと、放置状態のまま誰も扱えなくなりシステムがブラックボックスと化します。
営業部門においても、レガシーシステムを使い続けると、ビジネスの遅延が考えられます。営業DXを早くから導入すれば、準備段階で現状の分析からシステム刷新への取り組みが可能です。また、レガシーシステムの刷新は、国のDX推進にも便乗できます。DX推進と認められれば、経済産業省によるIT補助金制度の利用対象となるでしょう。
5.企業別営業DXツールの選び方
企業が営業DXを導入するには、事業に適した営業DXツールを選ぶ必要があります。営業DXツールの選定ポイントは、会社規模や利用する機能、形態別です。それぞれの営業DXツールの選び方を紹介しましょう。
会社規模別で営業DXツールを選ぶ
営業DXツールを会社規模別に選定する基準は、従業員数70人を基準として大企業と中小企業に分けて紹介します。営業DXを会社規模別に選ぶポイントは、次のとおりです。
従業員70人以上の大企業向けの営業DXツールを選ぶポイント |
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従業員70人以下の中小企業向けの営業DXツールを選ぶポイント |
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大手企業が営業DXツールを利用する場合は、多拠点の事業所や部門間をまたいだ情報の共有が求められます。そのため、営業DXツールによる情報の一元化や可視化できる機能が必要です。
中小企業が営業DXを選ぶ場合は、費用対効果を重視する傾向です。営業活動における課題においても、営業DXツールに求める機能が異なります。機能と料金のバランスを考えて極力不要な機能のないツールを選びましょう。
また、営業DXツールの選定は社内IT部門の担当者にDXの専門知識がなければ、ベンダーのサポート対応が必須です。DXに精通する人材を育てるか、外注するかも判断として求められます。
必要とする機能別で営業DXツールを選ぶ
営業DXツールは、「営業現場で役立つ機能があるか」など、事前チェックが必要です。営業DXツールにより可能となる主な機能を紹介します。
営業DXツールによる案件管理 | 商談内容および担当者、タイムラインの記録など |
営業DXツールによる顧客管理 | 顧客基本情報データベース管理・プロモーション履歴保管・グルーピングなど |
営業DXツールによる行動管理 | 案件ごとの優先順位付け・カスタマージャーニーマップ作成・施策提案など |
営業DXツールによる日報管理 | 日報作成・営業チームによるオンライン共有・ToDoリスト作成など |
営業DXツールによるスケジュール管理 | スケジュール作成およびタスク管理、通知機能など |
営業DXツールによる名刺管理 | 名刺スキャンなど |
営業DXツールによるデータ分析レポート | AIによる分析・目標を視覚化したKPI作成・進捗度測定など |
営業DXツールによるカスタマーサポート | インサイドセールスシステム・メール配信など |
営業DXツールは、営業活動における必要な機能が搭載されています。「自社にはどの機能が必要なのか?」など、課題を明確にすることが大切です。営業支援に特化した機能であればSFA。顧客情報の管理であればCRMがおすすめ。見込み客の確度を深めることが目的であれば、MAが役に立つでしょう。
形態別で営業DXツールを選ぶ
「営業DXツールを単体ツールで選ぶか」または、「グループウェアで事足りるか」など、営業DXツールを形態別で選ぶ場合は、次のポイントを基準にします。
単体ツールは、SFAやCRM、名刺管理ツールなど用途に応じて営業DXツールごとの特性で選べます。一方のグループウェアは、営業部門だけではなくグループ内の業務を一元管理できるツールです。
営業DXを単体ツールで選ぶ場合 |
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営業DXをグループウェアで選ぶ場合 |
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営業DXツールの具体的に求める機能が決まっている場合は、単体ツールをおすすめします。たとえば、案件管理に課題がある場合はSFA。営業DXだけではなく、社内全体のDXの導入を考えている場合はグループウェアが向いています。
6.営業DXツール導入の失敗事例と導入前に注意すべきこと
営業DXツールを導入すれば、必ず成功するわけではありません。営業DXを導入に失敗するケースもあります。営業DXは、簡単に成功できる取り組みではなく、事前準備に時間をかけて導入を目指すことが必要です。
営業DXにおけるデータの取扱い
たとえば、営業DXツール導入にあたってデータ収集の段階で、正確でない顧客情報や営業記録を扱ってしまうケースがあります。属人的な体制から営業DXへと引き継ぐ場合、過去の顧客データや履歴の正確性です。デジタイゼーションができていなければ、そのまま利用すると重複や誤情報につながります。
営業DXツール導入時のデータ統合では、顧客管理と業務管理を一元化することが重要です。正確さに欠ける情報や重複する情報などは、準備段階で整理する必要があります。
一元管理できる営業DXツールは、営業部門の運用ツールとして標準化することで正確性と効率性を求められます。DX化により、属人的な体制からの脱却を目指しましょう。
他には、営業DXツールの導入時に他部門のシステムからデータを統合して失敗するケースもあります。営業DXツールの導入が結果的にシステムの管理を煩雑にしてしまうと逆効果になるでしょう。他部門のシステムがレガシーシステムであればなおさらDXの必要性が高くなります。
営業DXツールの導入時は、既存のシステムや連携を予定している他部門のシステムとの互換性やリスクなどを事前にチェックしておく必要があります。営業DXの知見がなければ、導入時のサポートも含めてDX推進を考えてみてはいかがでしょうか。
営業DXにおけるデータ分析
営業DXの導入でデータの取扱いを標準化するのは、時間を要します。営業DXは、営業担当者を基準に整備していく取り組みではなく、業務で活用するデータを基準に進めます。そのため、営業DXでは取り扱うデータを分析して改善が必要です。
営業DXを導入しても失敗するケースは、データの分析や改善作業が公平に判断できないことです。営業DXツールを活用しても、データの取扱いに知見がなかったり、売ることを優先した体制だったりすれば営業DXが上手く稼働しません。
営業DXツールの優れている部分は、あらゆるチャネルからリアルタイムで収集する顧客データです。営業DXツールの特性を生かすには、自社で組む営業DXのシステムに自社都合の視点を含めないことが肝心です。
営業DXツールを存分に活用することは、データ分析による適切な顧客対応です。
営業DXにおける目指す方向と組織体制
営業DXを成功させるには、「自社の営業DXでどのようなゴールを求めているのか」を明確にすることがポイントです。営業DXでは、目指す方向が具体的に定められていないと、データと担当者の間で衝突を生み出します。何度も言うようですが、営業DXと属人的な体制は、共存できません。営業DXの導入に関して、既存担当者の理解も成功に向けた重要なポイントとなるでしょう。
営業DXは、顧客第一主義で展開する取り組みです。多様化している消費者心理に訴求することは、営業DXのデータ活用が欠かせません。この営業DXによる視点を疑問視する担当者や関係者などが反発することも考えられます。
大事なポイントは、営業DXによりビジネスモデルを変革することです。営業DXを単なるデジタル化と捉えず、古い業務体制からの脱却と考える必要があります。営業DXを建設的に進めるには、営業DXを推進するプロジェクトに各部署のキーパーソンや経営陣の参加が重要なポイントです。
営業DXツールを選定する前に、「自社が営業DXで変わる体制であるか」を判断して、営業DXを速やかに進める組織体制をつくりましょう。
7.まとめ
ここでは、営業部門におけるDXの前提として、デジタイゼーションとデジタライゼーションを紹介してきました。DXは日本企業の大半が向き合わざるを得ない課題です。しかし、海外企業のような成功例はまだまだ少ないのが実情です。できるだけ早くDXを達成するため、まずはデジタイゼーションを後押しするツールを現場に浸透させるところから始めてみてはいかがでしょうか。