原価管理とは?目的や手順、効率的に行う方法などの基礎知識
経営環境の変化とともに、現在では幅広い業種で行われているのが「原価管理」です。原価管理とは、さまざまな原価を管理し、利益の改善やリスク対策などを目指すことをいいます。しかし、原価管理の目的が曖昧になっていたり、煩雑な方法で原価管理をしていたりというケースも少なくないでしょう。
そこで本記事では、原価管理の概要や目的、手順などを解説するとともに、原価管理を効率的に行う方法やおすすめのツールをご紹介します。
負担なく効率的な原価管理を実現したいとお考えの方は、ぜひ参考にしてください。
記事の内容
1. そもそも原価管理とは?
初めに、「原価」の意味と「原価管理」の概要について確認していきましょう。
原価の意味
原価とは、一般的に「製品の生産やサービスの提供に必要なコスト」のことをいいます。業種ごとに「原価」が指すものは異なりますが、特にIT業界などでは、おもに外注費・労務費・経費の3つを原価として考えることが多いでしょう。
それぞれの費用の概要は次のとおりです。
外注費:システム開発やデザイン、コーディングなど、プロジェクトに必要な業務の一部を社外に委託する際にかかる費用のこと
労務費:社内で働く従業員の、稼働した時間に対してかかる賃金や手当などの費用のこと
経費:パソコンやソフトウェアなどのIT資産を導入する際にかかる費用や、消耗品の購入費、出張のための従業員の交通費などのこと
また、労務費は「直接労務費」と「間接労務費」に、経費は「直接経費」と「間接経費」に分けられます。直接労務費・直接経費はプロジェクトに直接的に関わっている費用のことで、間接労務費・間接経費はプロジェクトに間接的に関わっている費用のことです。
そのほかには、商品をPRするための宣伝費や営業にかかる経費なども原価に含まれます。
原価管理の概要
原価管理とは、上記の「原価」を管理し、利益の改善やリスクの管理などをすることをいい、「コストマネジメント」とも呼ばれることもあります。
もともとは製造業を中心に用いられていた「原価管理」ですが、経営環境の変化とともに、現在では幅広い業種で原価管理が行われています。
2. 原価管理の仕事内容とは
原価管理の仕事内容は、商品の製造やサービスを提供する際に発生する原価を管理することです。各原価を常に一定にして発生する固定費、売上などに比例して変動する変動費に分けることができます。
細かく分類を行い、過去の数値と比較し増減を確認しさらなる改善を行っていきます。原価管理と聞くと製造業などの印象が強いかもしれませんが、IT業界も例外ではありません。
IT業界で「原価」として考えられる項目はこちらです。
・経費
IT業界では、パソコンを使って作業をすることが多いですが社員が使用するパソコン、サーバーや利用しているソフトウェア、事務用品や打ち合わせで使用した飲食代などは経費となります。
経費は案件に直接関わるものであれば、直接経費として案件の原価に加算されることとなります。事務所の家賃や水道光熱費など、特定の案件ではなく全ての業務を進めるために必要な経費は間接経費となり各案件に振り分けられます。
・外注費
案件を円滑に進めるために、業務の一部を個人事業主など社外の方に委託することもあります。委託した場合に発生する外注費も原価に含まれます。
・労務費
労務費は、会社で働いている社員がどれくらい稼働したのか時間で換算されます。案件を行うために直接関わってくるエンジニア、デザイナー、ディレクターなどの労務費は直接労務費。バックオフィス業務を行う総務などの労務費は、間接労務費と呼ばれ各案件に振り分けられます。
3. 予算管理や原価計算、利益管理との違いとは
原価管理と似た言葉に、「予算管理」や「原価計算」「利益管理」があります。
続いては、原価管理と予算管理、原価管理と原価計算の違いをそれぞれ解説します。
原価管理と予算管理の違い
予算管理とは、プロジェクト全体の予算編成をしたり、予算と実績の比較分析を行ったりすることです。一般的には、「期」ごとに予算を編成し、「期末」に予算と実績を比較します。
原価管理は、製品やサービスの1つの売上にかかる原価を管理するもののため、イメージとしては予算管理の中に原価管理があると捉えていただくとよいでしょう。
原価管理と原価計算の違い
原価計算とは、製品の生産やサービスの提供にかかる原価について、漏れなく正確に計算し、どれだけのコストがかかっているのかを把握することです。
一方の原価管理は、基準となる原価を設定し、その基準から外れないように調整したり、あるいは基準よりも原価を下げたりすることを指します。そのため、単に原価計算をしただけでは、原価管理をしたことにはなりません。原価計算は、徹底した原価管理を行ううえで必要な手段の一つです。
原価管理と利益管理の違い
企業の利益を増やすために計画や改善案を立てて実行することを利益管理と言います。利益管理は、その名のとおり利益を管理しますが利益を上げるためには原価を含めさまざまな管理も必要を行わなければいけません。
そのため利益管理は幅広い部分を見る必要があります。原価管理は利益を上げるために行わなければいけない、原価の部分に絞って管理を行っています。
4. 原価管理を行う目的
原価管理を行う目的は、次の3つです。
・無駄なコストを削減する
・適正価格を設定する
・リスクを管理する
それぞれの目的について理解していきましょう。
無駄なコストを削減する
製品やサービスの販売価格に対して原価が高いと、自社が得られる利益は小さくなります。1単位あたりの利益の差は微々たるものでも、全体で見れば大きな差が生じてしまうでしょう。
そこで原価管理をすれば、プロジェクトを進めるうえで慣習的に外注している業務などを見直すことが可能です。
外注費に関してなら、例えば「本当に必要な外注なのか?(内製化したほうが良いか?)」「より低価格・高品質で請け負ってくれる外注先はないか?」などを検討するきっかけになります。
原価管理によって無駄なコストを見える化し、原価を抑えることと、成果物の品質のバランスを見極めながら、自社の利益の確保を目指します。
適正価格を設定する
どんぶり勘定で製品やサービスの販売価格を決めてしまうと、価格が低すぎて損失が増えてしまったり、逆に価格が高すぎて商品が売れなかったりするケースなどが想定されます。
原価管理を継続的に行うことで、製品やサービスの適正価格を見極めやすくなるため、こうした事態を回避できるようになるでしょう。
リスクを管理する
原価は、そのときの経済環境や社会情勢などによって変動するものです。原価が上がっても販売価格が変わらなければ、上がった原価の分だけ自社の利益は下がります。
原価管理を行うと、原価の変動リスクを予測し、対策を立てることが可能になるため、自社の利益の低下や損失を最小限に抑えやすくなるでしょう。
5. 原価管理を行うメリットや重要性とは
原価管理は手間だと思うかもしれませんが、事業を拡大するためには必要不可欠と言っても過言ではありません。
原価管理を行うメリット
原価管理を行うメリットはこちらです。
・自社の利益の状況を正しく把握できる
・収益を向上させるための計画が立てられる
原価管理をしっかり行うことで、自社の利益を正しく把握することができます。原価を把握していなければ、売上はあがっているのに利益が出ていないという状況に陥りかねません。自社の商品やサービスを提供するのにどれくらいの原価がかかっているのか理解することは、価格の見直しにも繋がります。
定期的に見直すことで、利益を確保するための計画も組みやすくなります。
原価管理を行う重要性
原価管理を行うと損益分岐点が把握でき、無駄なコストがあることに気づき削減することができます。
損益分岐点とは、売上がこの点を超えると利益が発生し、それ以下だと損失が生じるという、ビジネスにおける売上の転換点を指します。このポイントを把握することで、望ましい利益を得るために必要な販売量や生産量が明らかになります。損益分岐点は、経営戦略や購買、生産計画などに影響を及ぼす、非常に重要な情報です。
利益を上げるためには無駄なコストを削減する必要がありますが、原価の詳細を見ることで無駄なコストが明確になります。項目ごとに削減できる箇所はないかチェックしましょう。
6. 原価管理の手順〜4ステップ〜
原価管理の手順は、次の4つのステップに分けられます。
1.標準原価を設定する
2.実際原価を計算する
3.標準原価と実際原価を比較する
4.分析結果に基づき改善行動をとる
各ステップの内容を簡単に紹介します。
標準原価を設定する
最初のステップでは「標準原価」を設定します。標準原価とは、目安・基準となる原価のことで、標準原価の対義となるのが「実際原価」です。市場調査を行ったり、過去の実績を参考にしたりして、製品の生産やサービスの提供を正常に行える範囲で標準原価を設定します。
標準原価を設定する際には、実現可能な目標値にするのに加え、利益とのバランスも考慮することが大切です。
実際原価を計算する
次のステップでは「実際原価」を計算します。実際原価とは、実際にかかった原価、いわゆる原価の実績です。
実際原価を計算する際には、1つの売上に対する原価を漏れなくカウントするよう注意しましょう。
標準原価と実際原価を比較する
事前に設定した標準原価と、進めてみた結果の実際原価を比較し分析する段階です。標準原価と実際原価を比較することで、きちんと利益が出るプロジェクトなのかを判断できます。
両者に差が生じているのなら、なぜその差が生まれたのかを分析し、無駄や課題を洗い出しましょう。
分析結果に基づき改善行動をとる
最後のステップでは、上記の分析結果をもとに、無駄なコストを削減するなどの改善行動につなげていきます。
外注費を例として挙げると、内製化するか外注を続けるかの判断や、価格や品質を考慮した外注先の見直しなどです。
さまざまな要因を検討し、原価を無理なく抑えることを目指します。
7. 原価管理の課題とは
原価管理を行うことは、企業にとってとても重要でありメリットがあります。しかし、原価管理では課題として挙げられている問題がいくつかあります。
・量産した後に差異が生じた場合の対処
製品の生産原価を削減するためには、標準原価と実際原価の違いを調査する原価差異分析が必要です。しかしながら、データ収集と分析には手間がかかり、このために原価差異分析を迅速に行うことが難しく、量産した後に差異が生じても経営判断が遅れてしまう可能性があります。
・実績把握に時間を有する
システムを導入せずに原価管理を行っている場合、全社的なERPシステムなどを通じて原価関連情報や各種分析データを経営層と共有する手段がないため、原価管理が資材調達計画や生産計画、在庫計画などの経営判断に時間がかかってしまいます。
・原価変動に伴うシュミレーションがしづらい
イレギュラーな場面で仕入先を変えなければいけない、原料が高騰したなど価格変動が起きた場合、原価の変化が経営にどのような影響を与えるのかシュミレーションがしづらいのも原価管理の課題として挙げられます。
判断が遅れると企業に大ダメージを与えかねませんので、なるべく早く策を打つ必要があります。
8. 原価管理を効率的に行うためには
ここまで、原価管理の概要や目的、手順などを説明してきましたが、実際に原価管理を行うにあたり、どのような手段で行えばよいのでしょうか。
原価管理の目的を達成するためには、原価管理の活動を繰り返し継続的に行うことが重要です。そのためには、いかに効率的に原価管理を行うかがポイントとなります。
原価管理を効率的に行う手段として、原価管理機能が備わったツールを導入するのが有効でしょう。
ツールを導入するメリットは、次のとおりです。
<原価管理ができるツールを導入するメリット>
・あらゆる原価情報を一元的に管理できる
・精度の高い原価管理を実現できる
・チーム内での情報共有が容易になる
・テレワーク環境でも利用できる
・ツールによっては、原価管理の情報をもとに自動で帳票を作成してくれる など
原価管理の手段として、これまで一般的な表計算ソフトしか使ったことがないという方は、この機会にツールの導入を検討してみることも選択肢の一つとなるでしょう。
9. 「ジョブマネ」で負担のない原価管理を
負担なく効率的な原価管理を行うなら、テレワーク環境でも利用可能なクラウド型オールインワンツール「ジョブマネ」がおすすめです(※)。
ジョブマネには、原価管理機能をはじめとする合計17の機能が搭載されています。以下では、原価管理機能のポイントをご紹介します。
※オールインワンはビジネスプランのみとなっています。
参考:クラウド型グループウェアや案件・顧客管理システムの導入はジョブマネ株式会社
6−1.【ポイント1】1つの売上に対して複数の原価情報を登録できる
ジョブマネの原価管理機能では、1つの売上に対して、複数の原価情報を登録できます。そのため、外注先が増えても正確に原価情報を管理可能です。
参考として、ジョブマネでの原価管理の必須項目は次のとおりとなります。
・原価詳細
・原価区分(「外注費」など)
・発注先名
・原価金額
・発注月
・案件名
6−2.【ポイント2】原価情報に基づき注文書を自動作成できる
登録した原価情報の画面で「注文書出力」のボタンを押すだけで、自動で注文書が作成される仕組みとなっています。その都度新たに帳票を作成する手間がなくなるため、従業員の業務負担の軽減に寄与するでしょう。
原価管理機能の詳細はこちら
10. まとめ
原価管理とは、外注費や労務費、経費など、製品の生産やサービスの提供に必要なコストである「原価」を管理し、利益の改善やリスク対策などを目指すことです。
原価管理を行うおもな目的は、次の3つです。
・無駄なコストを削減する
・適正価格を設定する
・リスクを管理する
原価管理の目的を達成するためには、いかに効率的に原価管理を行うかがポイントとなります。原価管理機能の備わった専門的なツールを活用すれば、効率的かつ負担のない原価管理が可能です。
今回ご紹介したクラウド型オールインワンツール「ジョブマネ」では、30日間の無料トライアルを実施しています。
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